野犬に…

今夜21時50分。

ジョギングをしようと淀川沿いに行った。

格好は動きやすいジョギング用のハーフパンツにTシャツ。

靴はジョギング用の靴。

久しぶりの練習で、まあ今回は肩慣らしかなと思ってゆっくりと走っていた。

最初は雨が小ぶりだった。

しとしとと降る雨。全然走る上では支障のないほど。

他にも走る人が見える。

ちょっと走ってすぐ歩く俺。

まだまだ走り続けるその人。

いやー久しぶりだとやっぱり走れんなぁと思った。

そんなことを思いながら西中島南方から十三へ近づいた。

左手には梅田の大夜景が見える。

目の前が十三大橋というところで折り返し、再び西中島へ向けて折り返す。

あたりは真っ暗。さっき走っていた人の影はもうなかった。

折り返してまもなく、雨が強まってきた。

メガネを何度も拭く。何度も拭く。

手に持っていたiPodがびしょぬれになってきたので、ポケットに入れる。

さらに雨は強まる。

それとあわせたように犬のほえる音が聞こえる。

一匹。二匹。いや、もっとか。

なんやねん。と思いながら、もう一度メガネを拭いてあたりをよく見る。

なにやら白い犬が見える。よく見えないが、白い犬以外にも何匹か見える。

「野犬だ！」

ほえる音が次第に大きくなってきた。

同じ方向ではない。違う方向からもだ。

犬の「非常事態警報」が発令されたんじゃないかと思うぐらいあたりがざわめきだした。

「やばい！」

さっきの犬が猛ダッシュしてくるのが見えた。

もちろん、一匹ではない。5匹はいたのではないだろうか。

僕はどうしようかまよった。

このまま戦うか、それとも逃げるか。

「逃げる！」

あの犬の勢いみたら即決だった。

ただ問題は逃げれる場所があるかどうかだった。

淀川沿いに道には土手へ上がれる階段が数十メートル置きに設けられてある。

それがあるかどうかが問題だった。

「あった！」

ちょうど、その階段はすぐそこにあった。

僕は今までにない猛ダッシュを掛けた。

走りやすい服かもしれないが、大雨で道はグチャグチャ。

夜なので全然見えなかった。

でも後ろからはあの犬たちがすごい勢いで走ってくる。

階段を一段抜かしで駆け上がる。

一瞬だった。

なんとか土手に上がった。土手にあがっても付いてきてたらバトル開始だ。

そう覚悟して後ろを振り向いた。

あの犬たちは階段の下でうろうろしてそれ以上はこなかった。

振り返ってよく見てみると、把握していたその犬たちのほかに、何匹もこちらをみていた。

どれを歩いて帰りながら思った。

「これが自然やな」

まさに、大自然と直面した瞬間だった。、こんな都会の真ん中で、人間以外に怖いものがあるとは。

帰る途中、ある看板を発見した。

「野犬に注意！」

そう看板に書いてあった。

「はよいえや！！」

そう思ったのと同時に、もっとこの看板ふやさなあかんで、と思った。

野犬がどれだけ怖いかを彼女に聞いていたことがあった。

それを聞いていたからかしらないが、あの時、とっさの判断が出来てよかったと思う。

一歩間違えば、僕はもうここにはいない。

なので、これを見ている皆さん。

野犬には注意してください。

淀川を夜中に走るときは土手の上にしたほうがいいです。

土手を下りたら終わりです。