[ショートショート] 居酒屋風コンビニ店員 タツヤ

かれこれ5年前の話。

とある、朝。

今日もあの、居酒屋風コンビニ店員タツヤの声が聞こえる。

「いらっしゃいませ~!!」

「こちらご利用明細になりますね~」

「おおきに、ありがとうございました~!!」

ある日、タツヤは言ったんだ。

「俺はコンビニっていうやつを変えたいんだ。あの流れ作業のような接客は、やりたくないんだ」

彼は確かに、居酒屋上がりのコンビニ店員だ。

どういう理由があったかは知らないが、

深夜のアルバイトが出来ることを理由に、

コンビニでバイトしているらしい。

それでいて、自分が居酒屋で働いていた店にも、

たまにヘルプで呼ばれることもある。

タツヤには、居酒屋という接客が好きなんだ。

そんなタツヤの店には、いろいろな客が来る。

コンビニなので、当たり前だが、客層も広いし、

回転がものすごい。

しかしタツヤは見分けることができる。

ある主婦が訪れた時には、

「いつもありがとうございます!」

と声をかける。

主婦は嬉しそうである。

あるサラリーマンが訪れたときには、

いつも袋を断ることを知っているので、

袋にいきなり商品を入れようとはしない。

支払い方法も、いつもの電子マネーということを知っているので、

手際よく手続きを進める。

疲れ果てたサラリーマンにとって、

その流れるような気の利いた接客に感動しながら、

一日を気持ちよく終えるのである。

そのコンビニが特別繁盛したわけではないが、

タツヤが来てからまるで雰囲気が変わった。

しばらくすると、客のほうから声を掛けられる。

タツヤの求めていた、居酒屋風コンビニ接客が実現できたときだ。

もちろん、この話はあまり知られていないが、

今、コンビニ業界が地域とつながりを求めていろいろなキャンペーンを打っているのも、

このタツヤの接客がきっかけである。

本当の接客って、こうじゃないんだろうか。

その想いを、ぶつけたタツヤは、ついにコンビ二業界をも動かしたのだ。

もちろん、その後もタツヤの挑戦はつづいてゆく。